Body Arts Laboratoryinterview

KAGEI

―海外のカンパニーで好きな振付家はいますか?

アラン・プラテルとシディ・ラルビ・シェルカウイとか。バットシェバ舞踊団のオハッド・ナハリンの映像の作品はすごく好きです。あれはやっぱり面白いですね。

―そういうなかで、自分が海外にアプローチするために確立している方向はありますか?

揺らぎますね(笑)。そういうところはあまりないかも? 山崎さんは?

―僕はいっぱいありますね。ただ、ニューヨークだと人の層が厚くて、たとえ良い劇場でやったとしても関係者が全員来るわけではないから。そういう意味において、まだ続けるしかないな~と。一方、僕は舞踏をそろそろ意識的にやろうかなと。

舞踏はどういうところから?

―僕は、土方(巽)さんが生きていたとき、アンチ土方として、土方さんに対して違うことをやろうとしていた。でも土方さんが亡くなって、対象がなくなったんです。それと上手い具合に、欧米からコンテンポラリーダンスが入ってきて、それに乗かったって感じ(笑)。

(笑)日本のダンスって幼いと思うのですが、山崎さんはどうですか?

―僕は最近の日本のことは知らないので、何とも言えないのですが、身体性のことで言うと、海外にいると日本人や韓国人の湿っぽい感じは独特で、また是非仕事したいです。西欧人だと、骨格が立体的で、作品はそれによって変わります。

身体性で言うと、金森(穣)さんや大植さんは、身体をちゃんと動かせることが第一条件なんです。それから雰囲気やアイデアが成立していくはずだと思うのです。そこがなくて、精神性やアイデア、コンセプトのみというのは、僕はダンサーじゃないような気がする。身体に向かう時間が少ないけど、ダンスをやりたいってことが、幼いと思うんです。それは環境もあると思う。お金が掛かるとか、コンテンポラリーダンスの指導者がいるとは思うのですが、見つけられないとか。
一方、矛盾しますけど、身体さえ使えればいいのか?ってことがある。ダンサーとして、不思議な妖艶な湿っぽさをだすとか――それは、テクニックだけでは出せなく、勝手に出るものもあれば、出ないものもある。そこと向き合っているかといえば、いままで僕が会って来た人では向き合っている人は少ない。全員がそうではないですが。

―平原さんは、ある意味成功していると思うのです。ダンサーとしてのサバイバルは、どのような感じですか?大変ですか?

大変です。あるとき、日玉浩史さんにベルギーに行きたいと言ったことがあります。でも、絶対日本でもやれる、皆やれないって言うけど、絶対抜け道があるって言われて。その抜け道をぬって行けって。

―いいこと言うね(笑)。

ただその抜け道、やたら狭いんですよ(笑)。

―自分の抜け道において、人ともっとコネクトしたいですか?

そうですね、意識的にしていないですが、確実に助けてもらっています。でも、僕の歩みは遅いと思うんです、(岩渕)貞太くんやKENTARO!!くんたちに比べて。彼らは自分で作品作って公演して、規模じゃなくて活動としてそうしている。僕はまだそこまでしていないで食べていけるのは、やはり人の力を借りてやっているんで、だから、それに応えることが抜け道だと思う。そこで応えられないと抜け道はないですね。日本には受講生は絶対数いると思うのです。その人たちに自分の世界を還元するのは、日本では避けて通れない道です。

―コレオグラファーになるためのプロセス、環境についてお聞きしたいです。登竜門としてトヨタコレオグラフィーアワードなどがありますが。

僕は、長期的スパンで付き合うことや、そのためのシステムがあったらいいと思います。優秀者に公演と金銭的なサポートがあるけれど、その後の活動を考えると、恐怖も感じます。もっと長期的な目で20年くらいを見ることはできないか。Noismも僕がいたときから6年間続いているので、そのことによって定着もしてくるし、意味がでてくる。そこなんじゃないかなと思います。日本で作品観ていますか?

―観ていません。観ていますか?

観ているのは、セッションハウスで定期的にやっている、5、6人での公演や、海外のカンパニーもなるべく行きますし、ちょこちょこ、BATIKなどです。

―ありがとうございました。

[2010.11]

構成=山崎広太、印牧雅子


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saki matsumura

平原慎太郎Shintaro Hirahara

北海道でバレエ、HipHopを始め、坂井靭彦、金森穣の下コンテポラリーダンスを学ぶ。2004-07年Noismに所属、その後フリーランスに。「瞬 project」「C/Ompany」「コンドルズ」で活動。またフリーランスのダンサーとして近藤良平、Carmen Werner、David Hernandez等国際的な振付家の作品に客演。国内外問わずダンス界を飛び回る。