Body Arts Laboratoryreport

昨年あたりから、あちこちで、続々とリサーチプロジェクト、スタディプロジェクトがアーティストによって行なわれています。たぶん、このようなことはずっと前から起こっていたのに、私のピントが合っていなかっただけという可能性もありますが、作品を創って発表するという、資本主義の枠にきれいに納まってしまったかに見えるアートの生産という行為をアーティストが再び捉え直そうとしていて、その波紋が少しづつ広がっているのを肌で感じています。

そんな中、ニューヨークで、Movement ResearchのStudy Projectシリーズの一環として行われた、Enjambre*/Network/Red* (*enjambre = swarm *Red = net) に一日だけ参加しました。これは、Martin Lanz Landazuri、Alejandra Martorell、Nohemi Montzerrat Contrerasの3人のアーティストがイニシアチブをとり、企画、実施された、「ネットワーク」をテーマにしたリサーチプロジェクトです。企画アーティストは、アーティスト独自のネットワークが各地で築かれている最近の動向から、このテーマに興味をもったそうです。企画者も含めて、参加者のうち誰も「ネットワーク」の専門家なではないので、「ネットワーク」そのものについてリサーチするのではなく、そこからインスパイアされて、活発な話し合いや、身体を巻き込んだ演習を一緒に行なうことが目的です。

まずは、一般的に「ネットワーク」という言葉に、みんな良い印象をもっていないよね、という話になり、違う言葉を考えだした方がいいかもしれない、というディスカッションから始まりました。確かに、「ネットワーク」=インターネット、TV などのブロードキャスティング、Facebookなどのソーシャル・ネットワーキング・ツールなど、デジタルで体感的には冷たい印象。私にとっては生活のレベルにおいても、いまいち、親しみを感じられない言葉です。今でこそ違うけれど、高校生くらいまで、「ネットワーク」といえば、TMネットワークくらいしか本当に思いつきませんでした。また、「ネットワーキング」というとビジネスのために人間関係を築くという意味合いが強いので、(それは決して悪いことではないのだけれど)やっぱり何か冷たい、表面的な、という印象を与えるのかもしれないです。

このディスカッションを踏まえて、最初の「インタビュー」と題された演習。2人ペアになり、1人は「ネットワーク」に関する質問をパートナーに投げかけるインタビュアーになり、もう1人はそれに答えていきます。インタビュアーは相手の答えの中で、自分が同意できるものとできないものをリストにして書き出していきます。この演習の最大のポイントは、それを行なっている間、2人はぴったりくっついて、常に、一緒に空間を動き回らなければいけないということです。空間には他のペアもいるので、パートナーの質問に集中し思考している間も、身体は他のペアと出会ったりしてまったく違う関係を築いていくのです。思考と意図のレベルでは、全く孤立しているそれぞれのペアなのに、身体のレベルではお互いをものすごく意識して親密な関係を築いているという、不思議で複雑な体験。しかも、そのスタジオには、アーティストが事前に描いたネットワークイメージ図や質問が、壁いっぱいに貼られていて、その紙が全て紫色をしていたので(たまたまだそうですが)、スタジオを焦点なく動き回り、ネットワークに思いを馳せている間、頭がぐるぐるしてきて、まさに、「ネットワークの渦に飲み込まれるぅぅ」体験をさせてくれました。話す/思考する/動く/書くをほぼ同時に即興的に行なうので、脳刺激度100%で、純粋にかなり面白かったです。

この演習からうまれた質問の例
– ネットワークに方向はあるか?
– ネットワークはどんな良い事をうむ?
– 誰かと知り合いになったらその人はすぐあなたのネットワークの一部になるということになるか?
– ネットワークと聞いてイメージする図を説明してください。
– ネットワークは全ての人の為に存在するか?

この演習からのフィードバックを皆で共有した後、次の演習。それは、書く/描く/動くのいずれかの行為をパートナーとの関係の中で自由に行なうというもの。アクション-リアクションというような直接的な関係を築くための演習ではないので、基本的に、各自自分の行為に没頭します。言葉や絵をクレヨンで思うままに描くのに夢中になりつつ、たまに私のパートナーだったアレハンドラが動いているの見て、頭と感覚の分裂を味わいました。何となく、私という個体レベルでの「ネットワーク」の存在を思ったり。アクティブな思考の中で、穏やかな感情が湧いているのは、何に対してのリアクションなのかな? 最後に、皆で、身体の中に存在するネットワークと巨大なネットワーク社会とのつながりを、少し考えてみたけれど、う~ん……内と外、様々な規模で無数に散らばる点と線に、何よりも敏感に身体は反応しているのだろうけど。私の思考回路は絡み合って、限界そうだったので、どう思っているのか、私のMs.身体に聞いてみたいと本気で思いました。「あのう、ネットワークについてどう思われますか?」―

[にしむら・みな|ダンサー・振付家]


* このスタディプロジェクトの詳しい記録は、企画アーティストが整理し終わり次第、Movement Researchの”Critical Correspondence”に掲載されるようです。
http://movementresearch.org/publishing/