暗黒をすり抜ける、
いつでもやってくる山崎!
暗黒の身体を思うと、沼地のような身体、傀儡、エイリアンのスライム状の身体、見捨てられた身体、老いていく存在、辺境に追いやられがちな身体のイメージ。そこに日本の芸能の原点を見るようにも思う。現在の伝統芸能の型に至る寸前の芸能的身体の状態と取りとめない暗黒の身体の関係は、幻想を呼び起こし、非常にスリリリングだと感じるのである。しかし室伏さんは暗黒と芸能は結びつかないと言っていた。僕の場合、例えば夜の帷から、または芸者たちがいる花街から、背後に忍び寄る暗黒というイメージは立体的な深淵性と一瞬の刹那性、そして身体から拡がる多方向への空間のディメンションを感じさせる。初めてアスベスト館を訪ねた時、股引姿の土方さんが猫背で稽古場を通り過ぎる姿態と帰りがけの目黒不動尊の夜の帷を見て、これが暗黒舞踏なのかなと感じたものだった。僕にとってのダンスにおいて必要不可欠と言わざるを得ない身体の暗黒をすり抜けた先には何があるのだろう?その先にあるものを問うことが、次世代アーティストに渡す鍵となればうれしい。
美術はずっと舞踏に長年貢献されてきた山村俊雄さんに手掛けて頂きました。
山崎広太