Whenever Wherever Festival 2021

山中芽衣|おれんじ

山中芽衣
《おれんじ》

髪は短くて、金髪。シャツはたくさんの小さなネクタイが書いてあるオレンジのシャツ。黒いズボン。白い靴下とスニーカー。今スパイラルの前にいます。

がちゃん。金髪は白い自転車を駐輪場に止める。天気は良く、秋の風が気持ちの良い自転車日和。

色々な大きさの、池のような形の窓がたくさんあるビルがある。金髪は鍵がかかっている透明のドアの外から中を覗いてみる。中はほとんど何もなく空間が広がっている。意識を集中して、空間を異動。そこに入ってみる。室内の温度は外よりも少し低くて、コンクリートの床からも冷たさを感じる。少し冷たい空気に触れながら、軽くそっと、空間とのパートナリングダンスを踊っている。少し揺れる床の部分があって、少し前の地震を思い出す。電車内で一斉に鳴り響いた携帯の警報を思い出す。すごいスピードで、カップに入った水がこぼれるようなスピードで一瞬広がったイマジネーションの感覚を金髪は思い出す。

金髪がそんなことを思いながら、軽く踊っていると、ガチャガチャとドアを開ける音がして、黄緑色のパンツを履いた女性が入ってくる。水色のTシャツを着た女性も、サンダルを履いた男性も、入ってくる。金髪のことは見えてないかのようで、次々と入ってくる人々は、エスカレーターを使って上の階まで登っていく。

金髪が、池の形をした窓から外を見てみると、清々しい青い空と、白い雲が見える。それと同時に、ビルに入ってきた人々も反射してみえる。そのまま中から外を見ていると、1番最初にビルに入ってきた黄緑色のパンツを履いた女性が、窓の外をふわりと上から舞い降りて、外の道にしっとりと着地。続いては水色のシャツを着た女性、そしてサンダルを履いた男性。ふわり、しっとり、ふわり、しっとり。ビルに入ってきた順番通りにどんどん上からビルの外の通りに舞い降りてきて、しっとりと着地したのち、踊るような軽い足取り、というか踊りながらどこかに向かって歩いていく。ビルに入ってきた時よりも、楽しそうに見える。

何か面白いものがあるんだろうと、金髪も窓を離れて、エレベーターを使って上に行ってみようと思っている。

きっと、上の階の壁は綺麗な水色とオレンジ色のグラデーションで室内なのに雲か浮いているというイメージが広がっている。多分オレンジ色の鯉も泳いでいる。

Photo: Photo:Body Arts Laboratory

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