Whenever Wherever Festival 2012

大倉摩矢子×鯨井謙太郒|エクスペリメンタル・パフォーマンス



photo
Hideto Maezawa


舞踏家大倉摩矢子とオイリュトミスト鯨井謙太郒の公開リサーチ/パフォーマンスは、「対話7割、実演3割」と予告されていたが、二人がそれぞれ持参したモチーフに対して、一人ずつ各々の身体技法で挑むことを対話を挟みながら行ない、最後は短い即興のセッションで、全2時間と少し。
大倉はタルコフスキーの写真、鯨井は藤原定家の和歌(への三島由紀夫の解釈も紹介)をモチーフに持参、三つ目は、会場からのリクエストもあり、モチーフを後から明かすかたちで、さまざまな母音・子音やそれらに分節できない音の連なりをイメージに、動き・意識を作動させた。鯨井がオイリュトミーのメソッドに基づき、その音を実際に声に出して音ごとに対応するムーブメントを行なった流れから、大倉も声を出しながら舞踏する初の試みもあった。

モチーフにアプローチするさい、その特異点をどのように抽出し捉えるか、つまりどのような「イメージ」としてつかまえるかが共通の課題となるが、その二人の方法の差異がきわだっていた。大倉は、たとえば身体感覚、神経知覚を総動員してある風景に在る状態をイマジネーションの力を借りながら身体/感覚に隅々にいきわたらせるようなアプローチ。対して、鯨井は母音・子音ごとに発生する喉を中心としたエネルギーに基づく、オイリュトミーで体系化されたムーブメントがバックグラウンドにあり、そのエネルギー・気のようなものがニュアンスの異なる空間/場を生み出すという考え方。

風景の写真と、和歌の言葉。そのモチーフの選び方からそれぞれの身体言語がはじまっている気がした。またオイリュトミーで体系化された音の単位/分節をはみ出すような、型と型のあいだをつなぐ(または別の分節を要する)モメントへの関心として、大倉の舞踏や、鯨井のダンスが注目されていた。

report by M.I.


2012年7月26日
森下スタジオ Sスタジオ

more info


Photo: Photo:Hideto Maezawa

背景画像を表示