Whenever Wherever Festival 2010

気象と終身—寝違えの設置、麻痺による交通

7/3[土]14:00-21:00|500円

小林耕平
笹本晃
高嶋晋一(企画)
冨井大裕
中井悠
橋本聡(企画)

くもりのち岩、時々直方体、ところによって倉庫。
窓が震え、枝葉揺れ、砂埃舞う。風が動かしているのか。あるいは、それぞれが自身で動いているのか。あなたがこのイベントに足を運ぶ。案内が動かしているのか、あなた自身で動いているのか。押しても引いてもびくともしない岩。岩自身で踏ん張っているのか、あるいは何者かに拘束されているのか。風は吹かない、殺されたか、収監されたか、眠っているから。窓、枝葉、砂埃で別の風をつくるか、起こすか。
これは1日間の上演と展示ではなく、1度に1日の気象と終身です。催促しても、耳はまだ閉じ終わらない。目が待機していても、まだ見始めない。予報はあまり期待できません。

始めと終わりがあらかじめ明示的である上演と、その所要時間が見る側に委ねられている展示という二つの発表形式。これらは、行為という束の間の現象と、ある一定の永続性をもつ物体という存在を、それぞれ見られるものとして囲い込む枠組みである。この区分を拡張して捉えれば、動いているものと止まっているもの、生と死の区別にまで行き当たる。われわれはこの区分を撹拌・融解するために「睡眠」という中間状態に着目する。睡眠とは行為としての静止、あるいは事物のような動詞ともいえる。
例えば、夢遊状態や物質代謝という意識にとって感知されざる領域の開発によって、「計画-実現-記録(準備-本番-片づけ)」「催促-待機(期待-忘却)」といった諸活動に内在する様々な分節を改編する。そこで重要なのは、単に未確定のまま進行し続ける過程ではなく、いまだ生まれていないゲル状の雛が、自らの殻を内側からつくっていくことで卵と成る、というアクロバットなプロセスである。それは、ルールを定めることとルールを実行することが相互に規定し合う、結果が原因にその都度すりかわるような事態なのだ。
眠っていることに気づかずに活動している誰かが、活動していることに気づかずに眠っている誰かに入れ換わる。そのときもたらされるのは、いわば、暖簾に腕押しのごとく手応えがない、けれどその手応えのなさがすでに手に残っているような、逆説的な感触であるだろう。

[フライヤーほか関連イベント記事]


小林耕平|Kohei Kobayashi
美術家。1974年東京生まれ。99年愛知県立芸術大学美術学部油画科卒業。埼玉県在住。主な展覧会に「六本木クロッシング2007 日本美術の新しい展望」(森美術館)、「ヴィデオを待ちながら―映像、60年代から今日へ」(東京国立近代美術館、2009)、「右は青、青は左、左は黄、黄は右」(山本現代、2009)など多数。神村恵カンパニー《385日》(世田谷美術館、2010)に美術で参加。

笹本晃|Aki Sasamoto
1980年横浜市生まれ。ニューヨーク在住。ニューヨークを拠点に活動を展開する日本人アーティスト。10代で渡英、その後アメリカの大学、大学院で美術、ダンス、彫刻等を学ぶ。個人の心理状況やパーソナリティーの表徴としての癖や習慣に興味を抱くようになり、以後、日常的な行為や手順をテーマにパフォーマンス/インスタレーションを発表。ドイツのグッゲンハイム美術館、ニューヨークのホイットニー美術館、国内では2008年横浜トリエンナーレに参加。

高嶋晋一|Shinichi Takashima
美術作家。1978年東京生まれ。2008年四谷アート・ステュディウム最優秀アーティスト賞受賞。主な展覧会に「インターイメージとしての身体」(山口情報芸術センター、2009)、「Flight Duration」(gFAL、2009)、「We Dance」(横浜市開港記念会館、2010)など。また「We Danceプレ企画 ワークショップ 試行と交換」(コーディネーター:手塚夏子)にもファシリテーターとして参加。

冨井大裕|Motohiro Tomii
美術作家。1973年新潟県生まれ。東京都在住。99年武蔵野美術大学大学院造形研究科彫刻コース修了。日用品の使用と原理的な彫刻の両立を試みる希有な作家として知られる。これまでに個展・グループ展多数。2009年にgalleryαM「変成態―リアルな現代の物質性」、所沢ビエンナーレ「引込線」に参加。08年3月より、茨城県のアーカス・スタジオにて、個展「企画展=収蔵展」を作品が朽ちるその日まで開催中。

中井悠|You Nakai
音楽など。1980年生まれ。最近のプロジェクトとしては、2年前に制作した《Concerto No.1》《Aliaj Cirkvitoj》《si me non videas, esse negavis avem》(すべて2008年8月14日)とその前後日談を台本化した《concerto》を、10年11月にニューヨークのugly duckling presseから出版予定。

橋本聡|Satoshi Hashimoto
思案のち雨、時々かみっ切れ、ところによって地震。1977年東京生まれ 。「行けない、来てください」(アーカス)5月末まで開催、「待てない、逃げてください」(アーカス辺り、及び不明)2007年頃からいつまでか不明。6月 Art Center Ongoing にて個展、7月末より「もっと動きを:振付師としてのアーティスト」(広島市現代美術館)参加を予定。2017年「未来芸術家列伝IV」(東京)。

Photo: Photo:Body Arts Laboratory

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