オンライントーク
《共生と社会と〈らへん〉──理論編》
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Whenever Wherever Festival 2025のコンセプトから、その可能性をゲストとともに掘り下げるセッションをおこないます。
「共生と社会と〈らへん〉 1秒に1秒進むtime machineを一緒につくるということ」をテーマに、東京都港区でおこなわれたダンスフェスティバルWWFes2025。共生を、マイナーで非同期的な生が同期する、包括的ではないあり方として想像することをテーマに込めたWWFes2025をいわば象徴するプログラムの一つが、パブリックスペースでのパフォーマンス《ウェンウェアダンス》でした。風景との共存を志向するこのダンスは、共同キュレーター・WWFes創始者で振付家の山崎広太企画によって敢行されました。同時に、WWFesには多くのアーティストがかかわり、オルタナティブなプラットフォームを試行してきたなかで、ショーケース「Not About Judson in Tokyo」では、ニューヨークのジャドソンチャーチ派のポストモダンダンスを背景に「振付の民主化」というトピックを掲げ、5組のアーティストによる日本での表現を対置しました。
また山崎広太は近年、郡司ペギオ幸夫(天然知能研究・天然表現)による、外部を呼び込む概念「ダサカッコワルイ」(『やってくる』)とそれに派生する「脱身体化」をインスピレーションにしたダンスを発表しています。生命や意識について科学などの視点で多面的に研究してきた理学者・哲学者の郡司ペギオ幸夫は、自らアート実践もおこない、創造性と主体をめぐり精緻な理論を展開しています。哲学・宗教学を専門に、聖なるものや宗教について幅広い文脈で論じる柳澤田実は、移民コミュニティ支援の拠点として始まり、1960年代からは現代アート・ダンスを支援し現在に至るニューヨークのジャドソン・メモリアル・チャーチにも関心を寄せています。
WWFesで近年探求してきたキーワード〈らへん〉* とともに立ち上がる、身体像やフェスティバルのモデルから、どのような可能性を引き出すことができるのか。主にWWFes2025と山崎による振付実践を紹介し、その応答としてゲストの郡司ペギオ幸夫、柳澤田実による研究や実践に基づく思考を交換します。
* 場所を身体が横断するとき、知覚や記憶を伴って場所周辺に形成される固有の環境を指して、フェスティバルのコンセプトに据えた言葉として、〈らへん〉=アラウンドネスを提示。
開催情報
出演:郡司ペギオ幸夫、柳澤⽥実、⼭崎広太
企画:五月めい(WWFes2025共同キュレーター)
日時:2025年3月1日(土)19:00−22:00
配信方法:オンライン配信(Zoom)
料金:無料
*ドネーション受付中[任意](1口 500円):
https://wwfes2025donation.peatix.com/
参加方法:申込制(Zoom URLをお知らせいたします)
*開催後、期間限定でのアーカイブ無料公開を予定しております。
関連情報
郡司ペギオ幸夫|これは確かに、ダサカッコワルイ・ダンスだわ
WWFes2021ショーケース《ダサカッコワルイ・ダンス》(企画:山崎広太)レビュー。《ダサカッコワルイ・ダンス》は、郡司ペギオ幸夫『やってくる』(医学書院、2020)に登場する概念「ダサカッコワルイ」に着想を得た即興ダンス。
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プロフィール
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郡司ペギオ幸夫|Pegio-Yukio Gunji
天然知能研究・天然表現
早稲田大学基幹理工学部表現工学科教授. 東北大学理学部卒(理学博士).神戸大学理学部教授を経て2014年以降現職. 著書に『天然知能』(講談社メチエ2019年)『やってくる』(医学書院2020年)など多数.2021年より実家に誰も見ることのない作品の制作を始め2022年,日本画家中村恭子との二人展によって写真, 動画やインスタレーションを展示.2023年7月札幌市『ALIFE2023無意識的関係性展』にてグループ展.作品制作のドキュメントと創造性に関して『創造性はどこからやって来るか』(ちくま新書2023年)を出版.2024年2月長野市『もんぜん千年祭』でグループ展.2024年7月大阪大学中之島芸術センター『天然表現「投錨するアート」展』でグループ展.
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柳澤田実|Tami Yanagisawa
1973年米ニューヨーク生まれ。東京大学総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)、南山大学准教授などを経て、関西学院大学神学部准教授。専門は哲学・宗教学。宗教などの文化的背景とマインドセットとの関係を中心に研究している。訳書にターニャ・M・ラーマン著「リアル・メイキング いかにして『神』は現実となるのか」(2024年、慶応義塾大学出版会)、編著書に『ディスポジション──哲学、倫理、生態心理学からアート、建築まで、領域横断的に世界を捉える方法の創出に向けて』(現代企画室、2008)など。
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山崎広太|Kota Yamazaki
新潟県生まれ。舞踏を笠井叡、バレエを井上博文に師事。文化服装学院卒業。1995-2001年までrosy Co主宰。建築家の伊東豊雄ら他、共同作品を多数手がけ国内外で公演。以降、アメリカを拠点に、2007年ベッシー賞、2013年現代芸術財団アワード、2017年ニューヨーク芸術財団、2018年グッゲンハイム・フェロー他、各賞を受賞。2019年アルパート・アワードファイナリスト。2021年ドリスデューク財団助成。ボディ・アーツ・ラボラトリー主宰。ベニントン大学所属。