「2. 現在の助成事業の審査・評価等に係る現状と課題」への意見
現状
・「トップレベルの舞台芸術創造事業」について
助成されているほとんどの作品は、海外レベルとの比較において、水準が高いとは思えません。もっと審査を厳しくし、継続されるべきカンパニーも厳選するべきだと思います。アーティストを温存する目的によって成り立っている助成のように見えてしまうことは否めません。
課題
・審査委員に関して
外部有識者に委嘱する審査委員は、毎年変えることを希望します。審査において、公平性を担保することがもっとも重要であると思います。また、審査に当たっての経験やノウハウを持ち得ない方は、審査委員の対象にはなりません。
USでは、ある助成団体の審査委員にアーティストを採用しています。是非、日本において、ある程度の経験と公平性のあるアーティストの採用を望みます。何故なら、助成において、もっとも苦労しているのはアーティストであり、もっともそのノウハウを知っていること、そして、アーティストが他のアーティストの存在を審査を通して知ることは、将来において、良いコミュニティの形成へと繋がると確信するからです。
例えば、ニューヨーク・ファンデーションアーツでは、審査委員は毎回変わり、70%の審査委員がアーティストです。
・審査委員の目に触れることが少ない設立間もない団体や地域の団体が不利になることの可能性について
これに関しては仕方ないと思います。何故なら、ある程度の経験によって、一般的に活動が知られていくのであって、それには苦労が伴うことは必然だと察するからです。ただ審査委員がそのような活動を知ろうとすることを怠る場合には、甚だ問題があると思います。
・不採択理由に関して
不採択理由を応募団体が知ることは重要です。その場合、審査を1ラウンドと2ラウンドに分けて、2ラウンドまで残って、ファイナルに残れなかった団体のみに、採択理由を告げることを希望します。
例えば、ニューイングランド・ファウンデーションでは、2ラウンドに進むと、ファウンデーションのスタッフが、一層強固な助成内容にするために、アーティストとの綿密な打ち合わせをして書類を作ります。アーティストも、それにより、助成申請を学びます。そして最終選考で、4名のフェスティバル等のプレゼンターが審査し、決定します。もちろん、第2ラウンドに進めるのは、厳しい審査を通った内容だけです。
・事後評価に関する評価手法や評価基準の定型化に関して
まず、ジャーナリズムが成り立っていない日本の社会の現状があるため、評価の基準も難しいと思います。評論家の方々の、しっかりしたダンスへの見地からの評価を願います。
・実績報告書等の内容が次年度に十分活用されないことに関して
余りにも多い助成件数であり、一つのジャンルにおいて、それぞれの内容の違いが余りないように見受けられ、そのことに疑問を感じます。世界で通用しない、特色のないカンパニーを温存させるための助成であってはなりません。それ故、もっと厳しい助成審査を望みます。
また、文化的にも継続すべき内容であるかどうか、またはエンターティナー(商業的に大収入を目的としている)ものとの違いは、明確にするべきだと思います。一方、次世代を切り開くのは実験的なアーティストの活動であり、実験的な作品に対しても一目おくべきだと思います。そして、それを見極める評価軸は必要です。ニューヨークのメジャーな情報誌『タイムアウト』は、ほとんどが実験的な作品を扱っています。
日本において評価家の方々評価の対象は、とても曖昧だと思います。
・文化芸術への支援策をより有効に機能させることに関して
コンテンポラリーダンスに関しては、将来的に、コンテンポラリーダンスのための一個の専用のスペース、劇場を与えられたならば、全てにおいて、100%近くの問題がクリアになります。ここから発信するための、トップレベルの舞台芸術創造のために多大な努力をすることがミッションとなり、それによって海外とのネットワークができ、招聘も可能になります。
山崎広太[2011.6.8]
Photo: Ryutaro Mishima