Whenever Wherever Festival 2010

影響の不安



幸内未帆さんは、完璧なストラクチャーで、言葉とのダンスだった。ダンスが言葉とイコールだった。このプログラムのコンセプトは絶対いい。
report by 山崎広太

プログラムノートより

幸内未帆

そもそも「影響の不安」とはハロルド・ブルームの著書The Anxiety of Influence: A Theory of Poetryのタイトルで、ひとつの考え方として内容をごくおおまかに紹介すると以下のようになります。

─何かの創作を行う者は、規範となる先行者の影響の元でしか活動できないとし、先行者の影響の不安に晒されている。
それを乗り越えるためには、「誤読」や「意図的な操作」を提案する。─

先行者=振付家・二見一幸氏と私との組み合わせ。大変なテーマ、いやいや難題です。作業としては「影響」を受けている可能性のある項目を列挙することから始めました。が、ほとんどの項目に影響を受けていることが分かり、すっかりこんがらがった私が講じた手段は、二見氏振付作品「余白の残り」(幸内ソロ)のタイトルから本を想起し、二見氏の振付描写と似たタッチの「変身」を選び、音楽と馴染んだムーブメントを排除することとなりました。
しかし、そう、作品は作品。基の難題や題材から遠く離れて、それひとつで成立しなくてはならない。そうなったらある意味で盲目に創ります。勘(感?間?)を頼りにダンスムーブメントと所作の接点を狙います。共演の斉藤氏からのアイデアはダンスばかりやっている私にとって鮮烈で、全ての検証作業は充実した内容でした。
長く書いてしまいましたが、目と耳で「観る部屋」を楽しんでいただけますことを願っています。


《観る部屋》
振付・構成:幸内未帆
出演:斉藤直樹、幸内未帆
テクスト:フランツ・カフカ「変身」(訳:高橋義孝 新潮文庫第88刷)より抜粋
照明オペレーション:武田賢介
協力:二見一幸、ダンスカンパニー・カレイドスコープ

2010年7月4日
アサヒ・アートスクエア

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Photo: Photo:Body Arts Laboratory

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