Body Arts Laboratoryinterview

言語・身体・オブジェクト――踊りの大使は嫌。

山崎広太(以下KY)―《Centripetal Run》の全ての要素が必然性のように成り立っているような気がしたんですけど、4人のコミュニケーションは密なものがある感じでした。

私、多分凄いコントロール・フリークなんだよね。ここ何ミリとかさ。彫刻やっていると、そうなってくるのね。そういうエネルギーがそうさせるんじゃないかな。だから、これ以上高くやったら駄目とか、寸法全部合わせるとか、間違ったら困るという部分は先に全部消しているつもりなのね。紙の幅が6フィートだから、ストラクチャーの中のフィートとか大抵いろいろなところを合わせていくと、選択肢ができるじゃない。中を通す選択肢ありぃの、上を回す選択肢がありぃの。一応選択肢としての計算は全部してあるけど、それをそのままやるとは限らない。だからよく思うのは、オートクチュールで家具作って自分の家に来たんだけど、コンセントのこと忘れていて、この壁のために作ったのに結局2階のゲスト部屋に行ったり、そういうことってよくある。それを楽しむって感じなのかな。インプロの要素がそこに入ってくるのかもしれない。

MN―想像できない……。

KY―言葉も使っていたのですが、言葉と身体とオブジェクトの関係がイコールな感じがして、言葉をどういうふうに捉えていますか?

言葉は2007年くらいから使い始めたのかな? 何かこの方が早いと思った瞬間があって。そのときは大学院で、ビジュアルアートでいったから、結構物作りばかりしていて、でも踊るのもこっ恥ずかしいってのもあるし、アウト・オブ・コンテキストでその場に入っていけなくて、そこで踊っちゃうと、「この人踊りの人」みたいになるし、“踊りの大使”になりたくなかったから。

KY―踊りの大使のどういうところが嫌いなんですか?

踊りの大使になるイコール、多分踊りのプロじゃないとなと思った。

KY―(笑)

相当踊りでプロやっていないと、その役買いたくないし、相当踊りのプロやっている人は、その役しない。

MN―踊りの大使、嫌ですね。

と思わない? そういう立場を嫌がるつもりはないけど、率先してやる必要はないなと思って。だから大学院のときは、まだ他の人と踊ったりはしてたけど、そこはフィーチャーしなかったの。あくまでも彫刻で見てくださいと。でも、身体が入っちゃうわけよ。だから、ムーブメントあるし、空間の意識はあるけど、それは消化されたかたちで出たらいいな~と思って、そんなことしているうちに話し出しちゃった。どうしてそうなったのか。もともと、喋り好きだったのね。

MN―最近だと、美術館でダンスの公演があったり、昔からあったんだろうけど、特にビジュアルアートとダンスの境界みたいなことが盛んに言われ始めたと思うんです。晃さんはそういうことに関して何かありますか?――結構、関係なく前から自分のなかで両方の要素が自然にあったんだろうと思うのですけど。

ま~ファッションだから、たまたま重なっただけじゃない?(笑)それは、私にとってはありがたいことなんだろうけど、でもそれに便乗するのもおかしいっていうか、変なことになっちゃいそうだから、便乗しないけど楽しみたいよね。ちょうどこの話が出てきているし(笑)。

MN―確かに。

performance still
from "Centripetal Run"
photo:
Chocolate Factory Theater
Courtesy of Artist

彫刻――ファンクション、ダブルミーニング

MN―晃さんの作品で、オブジェクトがどんな小さなものでも装飾的じゃなくて全部役割を持っていて、本当に物使いのマスターって感じがしました。物にはもともと興味があったのですか? 作品でどうして物を使うのか教えてください。

やっぱり彫刻が好きなんだろうね。もともとダンスよりも、物の方が早かったんじゃないかな。絵描いたり、ビジュアルアートが好きだったんだろうな。多分、いちいち小さいのものでも何か目的がないと置かないのは、“大使”になりたくないから。だから「恰好いいなこの物」って置いちゃうとセットになっちゃうじゃん。セットや道具、小道具とか大道具にならないようにするためには、相当自分のなかで彫刻だと意識して作らないといけないから、そこでそれを折っちゃうと、大使になっちゃう。

MN―それが凄く違うな~と。あんなふうに物を使う人って見たことがないな~と思って。

だからファンクションということが一つよね。ファンクションがないといけない場合は、私はダブルミーニングを意識してて、このためだけに必要だから入れるんじゃなくて、願わくば二つ役割をしてほしいといつも考える。特に劇場よね。劇場で一回だけ出てきちゃうと、そのまま道具になっちゃうんだよね。だから道具になるのもOKだけど、それ以外の役割がないと排除したい、エディットアウトしたい。してないけどね、全部は。それを結構意識している。

MN―愚問かもしれないのですけど、小さいドーナツと、また大きいタイヤのような物があって、例えばそこに意味みたいなものはあるんですか? それとも……。

ドーナツ、好きなんだよね(笑)。2年くらい前は、ドーナツをメインの作品を作っているから(笑)。

MN―自分のなかであるんですね、ドーナツが。

それはそうね。それはホイットニー・ビエンナーレの《Strange Attractors》(2010)って作品で、ドーナツを食わしているんだけど。

MN―見たかも。パフォーマンスは見られなくて、セットだけ。

机の上にドーナツが置いてあるんですよ(笑)。ドーナツが好きなのよ。

MN―納得です。ドーナツがあると思って、最初から凄い気になって。

今回の劇場作品のインスピレーションはもともとはサムが作った木製の巨大ドーナツからきていて、私がドーナツが好きだから多分、彫刻家の人もドーナツを作ってくれて、それを見て、ま~本物も入れていくか、みたいな(笑)。彫刻との対比ってことを意識して、そうしたんだろうけど。

performance still
from "Strange Attractors"
Courtesy of Artist and
Take Ninagawa

Installation View of
"Strange Attractors"
Courtesy of Artist and
Take Ninagawa

即興――ずっと考えていたい。

MN―パフォーマーとして他の振付家と仕事もされていると思うのですが、例えば自分が強く影響を受けた振付家は?

それはイボンヌ・マイヤー Yvonne Meierじゃないかな。

MN―どんな点で特に?

彼女はめちゃインプロの人だもの。作品をガッチリ作るときも、リハーサルはインプロだし、一昨年くらいにやった作品は、全部彼女のスコアで、彼女がマイクで、はい、これをやりなさいみたいなことを言ってその場でやるみたいな。そく即興っていう。即興、即興って言って、アイディアはあるんだけど、最終的に動きは作らない。それは自分のパフォーマンスにも凄く影響してるんじゃないかな。

MN―イボンヌとは、いつからどういうふうに知り合ったのですか?

NYに来てすぐ、2005年とかからじゃない? 彼女の友達で、イシュマエル・ヒューストン・ジョーンズ Ishmael Houston-Jonesがウェスリアンに教えにきたときに彼の作品で踊ったかなんかで、友達だから、NYに来た後にハングアウトするようになって、何か流れじゃないかな? 彼女とは最初、仕事をしたってわけじゃないんだけど、気が合ったんじゃないかな?

MN―イボンヌ・マイヤーさんの作品を一つだけ見たことがあって、もしかしたら晃さんが出ていたかもしれないです。ゴリラが出てきた作品(《Area 51》)。

私、ゴリラの中にいました(笑)。

KY―《The Shining》のリバイバルは何回目ですか?

これは3回目だね。何かね、面白んだよ、あの人。

MN―結構、過激なんですか?

過激っていうふうに言われているけどね。私は過激というよりも、その決めなさが好き。

MN―結構、本番まで自由に。

自由にっていうか、方向性が決まっているんだけど、その動きいいとか、そういうのなし。ちょっとやってみようって言ってやってみて、あ~納得、みたいな(笑)。で、作品作るときって、やっぱりあれをキープしようって感じで、でも覚えていないじゃん。10分間のインプロなんて。だからなんとなく、その感じで舞台に行く。

MN―じゃ、楽しいですね。毎回違う。

そうそう。だからね、振付されたものって踊れないだろうね。

MN―そういう方が好きなんですね。

前はやっていたけど、多分、早い段階で、そういうの止めたの。

MN―他に振付家以外でも、ビジュアルアーティストや映画など自分が影響を受けたものは何かありますか?

実験音楽じゃないかな。ウェスリアンが実験音楽が結構盛んで。友達が音楽やっている人が多い。そっちの即興の方が私にとってわかりやすい。多分それを、身体とかインスタレーションの作り方、彫刻との付き合い方にも使っているんだと思う。言葉もね。

KY―即興の醍醐味は何ですかね?

やっぱり決めなくていいところじゃない(笑)。何か、決めちゃうと死んじゃう。で、あんまり考えなくなるから、ずっと考えていたい。私、結構同じ作品で、インスタレーションをカッチリ作った場合、何回もパフォーマンスするのね。パフォーマンスしながら固めていくって感じ。でも自分の頭のなかでは、まだ固めていないぞっていうふうに言わせて(笑)。ただ、即興の余地みたいなものがだんだん狭まってくるわけよ。そのときに、この作品は終わりかな。70~90パーセントの間を凄く楽しむんだと思う。

KY―そこに持っていくためには、かなり努力するんですよね。

凄く努力家だよ(笑)。

KY―一番、美味しいところを即興でやるという感じ。

下準備、凄くしたよ、みたいな(笑)。こねくりまわすからね。