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Essais(振付コース)について Part 2


来年度マスターコースになるにあたり、現在フランス文化省やパリ第8大学、モンペリエ国立振付センターなどとの話し合いが進行している。スウェーデンやオランダ、ベルギー、ドイツなど、文化に対する助成がある国々の中にフランスも数えられているが、この学校の施設や環境、レジデンスアーティストに対する優遇を見れば、国立現代舞踊センターがフランスの政治と大きく関わっているのが推測出来る。だが2009年、サルコジ大統領が芸術創造委員会(Conseil de la creation artistique)に対して、約1兆円もの支援を発表した。フランス映画の主要グループMK2、シャイヨー宮劇場などがこのコミッションに関わっているが、メンバーのリストが偏っているため非難の声があがっている。そしてCNDCはこの中に含まれていない。アヴィニョン、グルノーブルのダンスフェスティバルなどの参加アーティストにも影響が出ていると聞く。日本の現状を見れば、フランス政府給付金で勉強が出来、尚かつ個々の制作が出来る環境は素晴らしいものだが、芸術が政治と関わっている事情は、どの国も近いものがあるだろう。

振付コースの学生の一人であるブラジル人と話したときに、ブラジルは日本より貧しい国だが、アーティスト達が集まり、金銭的な援助を得るよう政府と直談判して、少しずつ環境が変わってきているという。彼女は地元の仲間とグループをつくり、スタジオを持ち、基本的に各々の制作活動を尊重し、必要なときにお互いサポートし合うようにしている。これは日本の地方にいる若手アーティストの活動に近いものがある。それぞれが活動を続ける中で、拠点が変わりスタジオを維持することが困難になるなど問題点もあるが、アーティストがエゴを捨てて結びつき、ダンス環境が良くなるように努力していくことは当たり前のことなのだと彼女から教わった。
また選挙の混乱から未だ情勢が不安定なイランからの学生もいて、自国ではダンス、音楽などの活動はアンダーグランドで行なわれているという。映画のようにまでいかないが、海外のビザを取得する手続きに時間がかかったり(アメリカのビザ取得は困難)、フェイスブックで政府を批判した人の中には、自国に帰れなかったり牢に入った人もいて、youtubeなども規制されている。そして国同士が対立しているイスラエル人もメンバーにいるが、二人は、考え方などお互いよく理解することができると話す。それぞれの国の影響がある中で、アーティストとして何を重視し選択するかで、今後の活動も変わっていくだろう。


当初、振付コースは1年間で終了する予定だったが、私達メンバーから学校側と掛け合い、半年間、「半生徒」「半レジデンスアーティスト」のかたちで、ビザと各々1000ユーロのリサーチ費用を貰うことができた。今年2月にはベルリンにてUdKの生徒とのエクスチェンジ「The Affair」で、ワークショップ、クラス、公演、ダンスビデオ上映などを行なった。5、6月にフランスでの公演を予定している。

環境は恵まれているが、競争社会である。また、コネクションがあるかアソシエーションに入らなければ、作品を見てもらうまでにも時間がかかる。パリより地方で制作する方が援助が受けやすいが、外国人にはビザの問題がある。言葉に問題があれば、何かのスペシャリストでなければならない。フランスは税金が高く、何かにつけ書類を書くことが多い。

以前、南アフリカでお金持ちの白人の家族に会ったとき、「No Pain, No Gain」と言われたが、困難をそのまま受け入れず、信念ややりたいことがあるならば、それらと戦ってみてもいいのではないかと今は思える。それは CNDCが自分の創りたい作品がつくれる環境であるからで、日本にいる頃は出来なかったことだ。今はやっとスタートラインに立った気持ちで、前よりダンスというものがもっと広く捉えられている。

振付はダンスに関してだけの言葉ではなく、ダンスがどこから生まれるのか考えると、生きる幅を拡げたり縮めたり日々の中から産まれてくる自然発生的なものであると思います。

[おおとし・めり|ダンサー・振付家]


関連サイト

CNDC Essais, FACコースの情報
http://www.cndc.fr/site/index.php/fr/ecole

Schools
http://schools.cndc.fr/

京都国際ダンスワークショップフェスティバル
http://www.hotsummerkyoto.com/news/

Association Art levant(日仏アート情報誌)
http://www.artlevant.com/

大歳芽里
http://kiwameri.oiran.org/

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