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12月24日(火)晴れ

芝の家滞在11日目

クリスマスイブ。この日は年内最後の芝の家オープン日/20時まで(27日はよるしば)ということで、どうしても身を置きたくなり、夕方から芝の家へ。出先からだったので、いつもとは異なる芝公園駅から歩いて向かった。紫色の空がとても美しかった。

17:00 到着

伺うことをお伝えしていなかったので、「あー!木村さん!」とスタッフさんたちが迎えてくださった。スタッフはAさん、Bさん、ご近所ラボ新橋でお会いしたCさん。

この日 知っている方はほぼおらず、子供達とお孫さんに付き添ってきたであろう女性が来ていた。

その中の一人の女の子が、「何年生まれ?」と話しかけてきた。斬新な声のかけ方。笑。答えようとしたら、女性(女の子のおばあちゃん)が「ごめんね、この子いつも女の人に話しかけるのよ」と気にかけてくださったので、「全然問題ないですよー」と話す。スタッフのBさんが暖かいお茶を運んできてくださった。沁みる。

女の子の名前はDちゃん。2018年生まれだそうだ。つい最近この世に現れたのか!と驚く。

Dちゃん、私、Dちゃんのおばあちゃんの3人でビー玉で遊びながら話していたら、おばあちゃんは占いのお仕事をされていることがわかった。

突然、「占ってあげるよ!」と言われびっくりするも、これもご縁ということでお願いした。
ほほー!という内容でした(内緒)。

スタッフAさんの息子ちゃんEくんも加わり、みんなでビー玉で遊ぶ。

18:00
Dちゃん、おばあちゃん 帰宅。
Eくんもお迎えが来て 帰宅。

スタッフCさんが、(おそらく手作りの)パイを振る舞ってくださった。ココアと一緒にいただく。とても美味しい。外はもう暗くて、普段 芝の家は16時クローズなので、夜の時間帯に身を置くのが初めてだったこともあり、学校に遅くまで残っていた時のワクワクするような気持ちを久しぶりに思い出した。パイを食べながらふと椅子の下を見たら、Eくんが忘れていったポケモンのブラッキーのぬいぐるみがあった。

気づけば、ウェールズにルーツのある男性と日本人の奥様がいて、少しお話しさせていただいた。ダンスの仕事で初めて海外へ行ったのが、ウェールズだったので、思い出深い場所だったりする。ウェールズ語の発音が難しいという話になり、スタッフCさんも交えてみんなで試してみるも、私は全く上手く発音できず。でも、久しぶりにウェールズ語を聞くことができて嬉しかった。

男性がひとりやってきた。彼は、近所に暮らすネパールからの留学生 Fさん。新聞配達の仕事をしながら日本語学校に通っているのだそう。今年来日したばかりだというのに、とても日本語が上手く、自分の名前も日本語で書いて説明してくれた。彼の1日のスケジュールを聞いたら、とても早い時間から朝刊の仕事をし、それが終わると学校へ行き授業を受け、帰ってきて夕刊の仕事をし、早めに就寝するのだそう。ハードだ。家族に会えなくて寂しいけれど、学校を卒業するまで頑張る!とおっしゃっていて、私も心の中で 頑張れー!!!!と叫んだ。

18:39
スタッフBさんが、ピアノでクリスマスの曲を弾いてくれる♩

スタッフAさんが、芝の家で作ったしめ縄飾りをひとつ分けてくださった。嬉しすぎる。。。。。拠点である小さな場「糸口」に飾ろう(飾りました!)。

Fさんがご家族と写っている写真を見せてくれた。ネパールに帰れるのは学校を卒業してからだそうで、再来年なのだとか。お正月はもちろん日本にいて、一緒に留学してきたネパールの友達もみんな関東のバラバラの場所にいるので会えないらしい。帰れないのも友達に会えないのも「寂しい」と言っていたけれど、「ここにくれば寂しくない うれしい」と話してくれたFさんの顔がとても印象に残っている。特にワイワイ騒いだり話したりしなくても、安心できる空間の中に自分を気にかけてくれる人がいたり、誰かと一緒に居られるということは、人間にとって大切な時間だと改めて思った。

19:20
美味しいサツマイモをいただいた。ごちそうさまでした。

地図を見ながら、スタッフAさん、Cさん、Fさんと話す。行ったことのある国について、行ったことのある日本の都市についてなど。地図は楽しい。

20:00
「良いお年をー!」
スタッフさんたちに挨拶をして、Fさんと芝の家を出た。
ちょっと歩いてはらっぱのところで解散。「またー!」とお互い手を振った。

この数ヶ月のことを思い返しながら、田町駅を目指して歩いた。
「アーティスト」として(という在り方や振る舞い自体、私の中で正解など持ち合わせていないけれど)というより、「ひとりの人間」として芝の家に身を置き、様々な方と過ごす時間や空間、会話や食を感じた / 楽しんだ 3ヶ月だった。それができたのは、芝の家が / 芝の家を取り巻く方々が 私の在り方や佇まいを決して決めつけてこないからだと思う。

「作品をつくる」ということは、対誰かや、対社会を、常に意識していくということでもある。今回の《ダンスタイムカプセル》は、芝の家でインタビューさせていただいた方など、特定の個人 / 数名へ向けた作品になるが、私はこのような個人的なやりとり / 交換をこれからも続けていきたい。その積み重ねが、公と繋がること、開かれていくことだと信じているから。また今回は、芝の家というおおらかな器が、個人もダンスも作品も包み込んでくれるので、心強い。作品をつくっていても、いなくても、常にそばにある他者という存在や、身体を取り巻く社会というものへの意識を無いものとすることはできないけれど、ほんの少しだけ手放すことが叶うかもしれない、そう感じている。

夜だと、田町駅前の横断歩道を渡る人の数が少なくていつもよりビルを感じた。


ダンスタイムカプセルお渡し会+埋める日
2025年1月18日(土)13時〜 @芝の家(無料/要予約/定員あり)
興味を持ってくださる方は、ぜひご参加ください。共に芝の家に身を置いて過ごしましょう。

※この日は芝の家の通常オープン日でもあります。ご近所の方、いつものようにフラッと入ってきた時、私が踊っていたら 眺めてやってください。また、「ダンスタイムカプセルお渡し会+埋める日」にご予約いただいた方も、こちらのイベントだけでなく、芝の家という場を、時間を、味わっていただけますと幸いです。















木村玲奈Reina Kimura
振付家・ダンサー。風土や言葉と身体の関係、人の在り方/生き方に興味をもち、〈ダンスは誰のために在るのか〉という問いのもと、国内外様々な土地で創作・上演を行う。近年は、ダンスプロジェクトのリサーチャーやファシリテーターとしても、幅広い年代の身体/心と向き合う。主な振付作品に《6steps》《どこかで生まれて、どこかで暮らす。》《接点》がある。2019–20年セゾン・フェローⅠ。2020年–東京郊外に《糸口》という小さな場・拠点を構え、土地や社会と緩やかに繋がりながら、発表だけにとどまらない実験と交流の場を運営している。
https://reinakimura.com

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